絵かきと猫
貧しい絵かきが ひまつぶしに描いた、猫の肖像画。それを見ていた通りすがりの…。
2009年の作品 “絵かきと猫” シリーズから、6点の猫の肖像画をご紹介します。
おはなしとあわせてご覧ください。
絵かきと猫 上段 size :(左)26×33mm (中)30×30mm (右)41×31mm / material : 銅、七宝 ( 2009 )
絵かきと猫 下段 size :(左)27×28mm (中)37×26mm (右)43×30mm / material : 銅、七宝 ( 2009 )
とある町のかたすみに、貧しい絵かきが、
年老いたやせっぽっちの猫と暮らしておりました。
彼の描く絵はとても芸術的だったので、
誰にも理解されませんでした。
もう、絵の具を買うお金も底をつきそうになったある日、
絵かきはひまつぶしに、ひなたぼっこしている老猫の横顔を描きました。
すると、それを見ていた、通りすがりの町一番のお金持ちが
「すばらしい!その絵を買おう!」と言いました。
絵かきは、「へ? この絵を?…
なら、あなたの好きな代金で持ってっていいよ。」
と猫の絵を差し出しました。
お金持ちは、なんと、金貨3枚も置いていきました。
その話はすぐに町中の噂になり、
『彼の猫の絵には、金貨3枚の価値がある』と、
われもわれもと遠くの町からでも、
猫の肖像画を頼みにやって来ました。
絵かきは嫌な顔ひとつせず、
みんなに好きな猫の顔を描いてやりました。
彼は、もう、貧しい絵かきではありませんでした。
年老いた猫も、もう、やせっぽっちではありません。
そのうち、彼のとても芸術的な絵までも、
高く評価されるようになったのです。
( 時として、芸術とはそういうものです。)
老猫は、あいかわらず、
ひなたぼっこしているだけ…
ニャンコロ、ゴロリ