水彩用紙について
水彩画を描くには紙がないと始まりません。
また、絵の具以上に絵の出来栄えを左右する場合すらあります。
世の中にはいろいろな紙がありますが、その中でも水彩画に適している紙を水彩用紙と分類しています。
水彩用紙以外でも水彩画を描ける紙はありますが、やはり水彩用紙とは差があります。
純粋に紙の質が良くても水彩画に適さない紙というものもあり、一概に値段が高いから良い、
美術専用スケッチブックだから良いとはいえません。
水彩専用紙と呼ばれる紙は総合的に水彩画に適した紙質で、大量の水を乗せても裏に透けせん。
また、画用紙などと比べれば変形もかなり少ないので、非常に描きやすい紙です。
表面もかなり丈夫で、多少の消しゴムかけにも耐えられます。
同じ種類の紙でも、紙の表面(紙目)によって絵の具の伸びも変わってきます。
紙にはいろいろな基準がありますので、幾つかの違いを頭に入れておくと良いでしょう。
なお、いわゆる水彩用紙の個々の特徴についてはこちらのページで説明していますのでご参考ください。
スケッチブック
スケッチブックは綴じ方によっておおまかに二つのタイプがあります。
スパイラルタイプ:
おなじみのスパイラルコイルによって綴じられているもの。
描き上がったら次々とめくっていけばいいので、連続して絵を描く場合に使いやすいですね。
注意点は、額装する(額に入れる)とき。
スパイラル部分まで含めた紙のサイズのものが多いので、表記どおりの例えばF4の額を買ってきて入れようとすると、
スパイラルの穴あき部分まで見えてしまいます。
画材屋さんで一回り大きい額を購入し、マットを入れてもらえば問題ありません。
ブロックタイプ:
紙の四辺を薄く糊付けしてあり、描き終わったらはがしていくタイプのもので、水彩専用紙に多く見られます。
紙の周囲が張り付いているので、水をたっぷり乗せても変形しにくく、非常に使いやすいです。
また、風によってめくれることもないので、戸外でももちろん活躍します。
糊付けしてあるので連続して描くには1枚ずつはがさなければなりませんが、
例えば上の1辺だけをくっつけたまま、他の部分だけをはがせば、スパイラル綴じと同じように使えます。
なお、スケッチブックだからといってすべて水彩画に適しているわけではないので注意が必要です。
文房具店などで取り扱っているスケッチブックの大半は画用紙です。
また、義務教育の美術の授業で使うスケッチブックですら、水彩画に適していない場合があります。
一般的なスケッチブックは例えて言えば汎用紙で、悪くいうと器用貧乏な性能です。
鉛筆画やクレヨン、水彩絵の具でちょっとしたお絵かきができるといった感じのものがほとんどです。
まだ絵を描けないような小さいお子様のお絵かき用としては十分かもしれませんが、
本格的に水彩画を描くには紙の質が足りません。
学童の美術用スケッチブックもその上位互換程度で、デッサン練習やらクロッキーやら、鉛筆画やら木炭画やら水彩画やら、
全てを1冊のスケッチブックで賄うことが多く、結局のところちょっと丈夫な汎用紙というレベルです。
この仕様の紙は水彩画の水分量に耐えられないものが多く、裏抜けしたり、
ちょっとたわむでは済まないほど波打ったりします。
美術の授業で使っていたものと同じだから大丈夫とは言えないので、購入する際は気を付けてください。
なお、文具レベルのスケッチブックと、安価ではあるものの水彩用紙として知られている紙の比較テストをしました。
比較画像がありますので興味があればご確認ください。
紙目について
紙目というと通常は縦目・横目を指しますが、水彩用紙の場合は一般的に紙の表面の粗さ・細やかさを判断します。
表面の凹凸加減だと思ってください。
同じ紙でも表面の凹凸の粗さによって、大まかに分けることが出来ます。
たいていは3つに分けられ、それぞれ荒目・中目・細目と呼ばれています。
荒目(ラフ):
紙の表面が荒く、凹凸が大きいのが特徴です。
絵の具を乗せると独特のタッチになり、ダイナミックな雰囲気になります。
ただし、絵の具と水分をたっぷり乗せないと、紙の凹凸によってはじかれる傾向があるので、
慣れるまでは練習が必要でしょう。
筆先や絵の具がはじかれるので、細密画にはやや不向きです。
ですが、水彩画らしい紙目を生かした絵には最適です。
中目:
一般的な紙目の用紙です。
凹凸は中くらいですが、画用紙に慣れている場合には荒目との区別が付きにくいです。
比較的描きやすく、はじめのうちはまず中目を選ぶと良いと思います。
細目:
細かく滑らかな紙です。絵の具が滑らかに流れるので、ボカシ等の技法に向いています。
淡彩のさらっとした絵にも相性が良いと思います。
ただ、絵の具が流れがちなので、これも慣れるまで練習が必要になるかと思います。
荒目のような絵の具のはじき方をしないので、細密画等にも向いています。
非常に目が細かい物に至っては厚手の上質紙やイラストボードの表面のような感触の物もあります。
サイズについて
紙の大きさの基準はいろいろあります。
また、縦横の比率の規格タイプによっては、数字が大きいほど紙も大きくなる物と、
数字が小さいほど紙が大きくなる物があるので注意が必要です。
A/B版:
オフィス用紙やノートによく使われる規格です。
例えばA4やB5といった規格で、数字が小さくなるほど紙は大きくなります。
文房具系のスケッチブックで良く見かけるサイズで、手軽に使えます。
○ツ切り:
画用紙や幼児用お絵かき帳などで使われるサイズです。
よく使われるのは8ツ切りと4つ切りでしょうか。
数字が小さくなるほど紙は大きくなります。
F版:
絵画では標準的なサイズ規格で、数字が大きいほど紙も大きくなります。
一般的にはF4号、F20号と、号数で呼びます。
スケッチ等には4から6号が使いやすいですね。
一番小さい0号はハガキ程度の大きさです。
なお、Fはフィギュア(人物画)に適した比率という意味ですが、もちろん風景等にも問題なく使えます。
個人的にはこれの4号が使いやすく気に入っています。
なお、展覧会等ではF10号やF20号を出品の最低サイズにするところも多く、
基本的に絵画はFサイズを基準に考えて良いと思います。
P/M版:
上記のFと共に絵画で使われる企画ですが、あまり馴染みはないかもしれません。
Pは風景(Paysage)に適しているといわれ、パノラマのようなものです。
Mは海(Marine)などの風景に適しているといわれ、これも広がりを持った絵に良いとされます。
その他:
L版は写真の一般的なサイズで、絵を描くには少々小さいです。
しかし文具店などで売っている手頃な価格の額に納めて飾るならば十分考慮に値するサイズです。
ハガキサイズは屋外で気軽にスケッチをするには便利です。
携帯用として1冊持っていても良いですし、もちろん絵手紙等にもおすすめです。
SM版はキャンバスや本格的な絵画用のサイズとしては最小の部類に入ります。
手のひらサイズ、手持ちで使用できるサイズといった感じでしょうか。 携帯用にお勧めです。
補足事項:
スケッチブックですが、先に書いた通り、大半は汎用紙でできています。
また、中学校の美術の授業で使うレベルのアート用スケッチブックも似たような状況です。
このアート用スケッチブックは1冊で多くのタイプの絵を賄う必要があるためか、
なかなか水彩に適したもの、欲を言えば特化したもの、というものに巡り合えません。
水彩画を始めるならば、水彩用紙のスケッチブックを1冊は用意したほうが本当に良いです。
廉価な水彩用紙ですら、高級画用紙を上回る描き心地と出来栄えになります。
どうしても画材店が近くにない場合は、幼児用のお絵かき帳ではなく、せめて画用紙のスケッチブックを探してください。
画用紙のスケッチブックならちょっとした画材店でも置いてあります。
こちらのページに少し書いてありますが、文具店でも取り扱っている可能性が高いスケッチブックのうち、
汎用紙ながら意外と使えるのが図形印刷です。
また最近は水彩向けの汎用スケッチブックであるヴィフアールも文具店で見かけるようになりました。
ヴィフアールは紙目で3種に分かれていて、画用紙よりはしっかりしています。
駆けだしの頃はこの辺りから始めるのでも良いと思います。