〜Le Monde〜 水彩風景画の簡単な描き方
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フィレンツェ遠景

〜風景画 遠景の街並み(フィレンツェ遠景)〜


今回は上の絵を描く過程を紹介します。
あまり難しいことはせず、簡単に描けますので参考にしてください(制作時間約1.5時間)。
※今回は構図取り(下描き)から完成まで全工程を公開します。


使用画材:


絵の具:
ヌーベルプチカラー
ホルべイン
ターナー透明水彩


紙:
汎用画用紙(図形印刷)


筆:
ミニリセーブル4号(ホルべイン)



制作の基本:


元写真
作品のもととなった風景です(ミケランジェロ広場から撮影)。


1.構図・描く位置を決める。
横に広がるパノラマのような風景なので紙方向は横にします。 とりあえず描く際に目安となる紙の縦横の中心に目印を入れます。 目検討で構いません。


構図下描き:位置取り

※ここではわかりやすいように色つきで処理していますが、実際は鉛筆で薄く書いてあるだけです。


水平の位置:
まず注意するのは、紙の中心イコール絵の中心ではないこと。
高台から見下ろしているので、もともと地平線は構図の真ん中より下に位置しています。
地平線を紙の水平中心より若干下げると広々と見えます。


2.パーツの大まかな場所を取る
構図下描き:パーツの場所を確認する
紙の垂直水平と構図の水平の目安を付けたら、絵の中で目印となる部品の位置を取ります。
右の聖母寺院のドーム、中央左の塔、画面の上下(左右)に分けている川と道路を決めます。
雲は適当です。


絵の地平線ですが若干左が下がっています。
右がトスカーナの山々、左手が川なので、地形によってはこのように地平線といえども平らではないこともあります。


3.目安を元に全体をざっくり配置する
構図下描き:大まかに配置する 各パーツの目安を付けたら、それに沿いつつ、全体のバランスも見ながら大雑把に各部分を配置します。
川や道路が左奥から広がっているので、それに沿うように配置。
まだ位置を決めているだけなので細かく描く必要はありません。


実際に下描きを紙に入れるかどうかはともかく、せめて頭の中ででもこれを確認しないでいきなり描き始めると、 描き進めていくうちにズレがどんどん大きくなって修正が大変になりがちです。


4.描写を始める
下描き:描写を始める 画面全体の配置が決まったら絵を描き始めます。
すでに画面全体の配置は決まっているので、それに沿って描いていけば大きくゆがむことはないので安心。


画面左上方向から構図の広がりに沿って描いていきます。 ここでは川と道路が目安の線となっています。
手前の茂みもそれに沿って描くと、奥へ続く感じが出ます。
厳密に消失点を取ったりはしていませんが、若干、一点透視っぽい描き方になっています。


5.全体に描きこむ
下描き:全体に描きこむ 紙全体にある程度描き込みます。
このような建物がぎっしり詰まった風景をそれっぽく描くには、あえてぎっしり描かないこと。


町の遠景は基本的に建物を一つ一つ描くのではなく、建物の集まった区画を一つの塊として描くのが楽。
しかしこの町は高低差がなく、建物間に大きな隙間もなく、一つ一つのブロック分けもできません。
こんな時は見えている一番手前(川沿い)の壁の列だけ描いて済ませます。
屋根は見えている川沿いの建物と目印の建物以外は細かく描かなくて良いでしょう。


手前右の木の茂みですが、実際は伐採されて太い枝だけがにょきりと露出している痛々しい姿。
構図的にも面白くないので普通に葉を茂らせました。


拡大:地平線付近やドーム周辺の町は屋根すら描いていない。
拡大




6.色塗りを始める
着彩開始 画面の遠くから色を付け始めます。


※空の上など、左の画像で不自然にグレーの部分は絵をパソコンに取り込んだ際の変色です。
実際には他の部分の空色と同じです。


極薄い青を空全体と地平線付近まで広げます(この段階では雲の部分は白く塗り残しておきます)。
画面右のほうが濃いので、まだ濡れているうちにもう一段階濃い青系混色を右付近に重ねてなじませます。
塗り残した雲の下にグレー系の混色を広げて雲に立体感を出します。
遠くの山や地平線付近も青く霞んでいるのでここで色を薄く付けておきます。


空(左方向):ウルトラマリン
空(右方向):ウルトラマリン+クリムソンレーキ
雲(影部分):ウルトラマリン+クリムソンレーキ+イエローオーカー


7.中景(屋根)に色を付ける
着色:遠景の屋根 この絵の特徴の一つである街並みの屋根に色を乗せます。
遠いので丁寧に描く必要はありません。
地平線に対しての水平方向や、建物の並び(川や道路の向き)に対しての水平方向に筆を走らせます。


屋根:クリムソンレーキ+イエローオーカー+バーントシェンナー
※筆をパレットに戻すたびに少しずつ絵の具を足して色を変えていくと味が出ます
※ところどころにウルトラマリンを足しています


8.近景(木立)に色を付ける
着色:手前の木立 手前に木立がありますが、今回の絵は全体で一つの絵であり、どちらかというと遠景がメインなので、 珍しく近景を細かく描く必要はありません。
木立の並びに沿って奥のほうから順々に色を付けました。
木の緑は同じ緑ではなく、実際よりも大げさに色を変えると面白い絵になります。


木立:
ウルトラマリン+イエローオーカー
ウルトラマリン+イエローオーカー+バーントシェンナー
サップグリーン+イエローオーカー
※配合の割合で色を変えていきます


9.画面全体に色を付ける
着色:全体に色を置く ある程度描きこめたら全体に色を置きます。
見えている前面の壁の列や川、道路と目立つ建物にざっと色を付けました。
これで何となく全体の色のバランスが取れました。


壁面:
イエローオーカー+イエロー
イエローオーカー+バーントシェンナー
イエローオーカー+クリムソンレーキ
※配合の割合で色を変えていきます


拡大:左奥地平線付近。
拡大
拡大:ドーム以外の屋根の適当さ加減。塗るのではなく短い線を書く感じ。
拡大
拡大:川の着色。
拡大
川面はウルトラマリンを極薄く延ばし、街並みが映っている付近にイエローオーカー系の色を乗せてなじませます。 濡れているうちに色を重ね、ぼかします。
基本的に水の色の濃さは空と同程度。




10.影を付ける
着色:仕上げ 全体の様子を見ながらところどころに影を乗せます。
光は画面の左上からあたっているので、右や下の面が暗くなります。
右面しか見えていない橋は完全に逆光です。
地平線の色を若干濃くして完成。


比較:影を付ける前。悪くはないが淡白な感じ。
拡大
ドーム付近拡大:影を付ける前。
拡大
影を付けてみた。影は少しだけでいい。
拡大
※他に影を付けたのは橋と手前の木立。


影の色:
ウルトラマリン+クリムソンレーキ+イエローオーカー
※ウルトラマリンが多めのベース。


完成:

フィレンツェ遠景

いかにも絵になる風景というのは絵にしにくいのですが、そこそこ絵になったようです。
この場所はフィレンツェ観光の定番で、ここで絵を描いている人は結構いますし、 この風景の絵ハガキもまさにその場所で売っています。
沢山の観光客や販売人がいるので現地で描く際はマナーや身の回り品に注意してください。



上手そうに見せるには:


【ライン上(状)に配置する】

厳密な一点透視の手法は取っていないものの、消失点が左奥に位置することは頭の中で想像しながら描きます。
この絵では川と道路がわかりやすいですが、全体的に左奥から右手前に向かう流れがあるので、 それに沿って木立や家並みを配置します。


【細かく描かない】

点のように小さい建物がぎっしり並ぶような風景は、 細密描写でもない限り、思い切って省いて描きます。
きっちり描こうとすればするほどボロが出ます。
遠くの街並みはシンボルとなるもの以外、一つ一つの形など描いていませんし、 着色も殆ど屋根しか描いていません。
赤茶色い点や線を適当に描くだけで、何となく屋根に見えてくれます。


ひとことメッセージ



  
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