混色を勧める理由:
最もその人の趣味や好みが現れる着色でしょう。
ところで絵の具はどのようなものをお使いでしょうか?
12色セット?
24色、もしくはそれ以上のセット?
淡彩といわれ、主に絵手紙などで、薄くしかし鮮やかで透明感のある絵を描きたい時は、
そのようなセットに入っている様々な色を、あまり混色せずにそのまま薄めて使うのが良いようです。
しかし、スケッチブックに描くような少々本格的な水彩画、特に風景画の場合は、むしろ逆だと思ってください。
風景画の場合、絵の具は何色も混ぜて使うのが基本です。
通常は3色、色に変化を入れたい場合は更にアクセントを足します。
私の場合は3〜5色の混色を使い分けています。
絵手紙や淡彩では色が濁ると敬遠されますが、風景の場合は複雑で深い色味が必要なため、
混色したほうがより良い色を作れます。
しかも決して濁った色ではありません。むしろ味わいのある色です。
これだけで絵が上手そうに見えます。
例えば出来合いの緑をそのまま塗ると、その緑の濃淡しか表現できませんが、混色で緑を作れば濃淡はおろか、
暗い青っぽい緑、鮮やかな緑、くすんだ緑、明るい黄みを帯びた緑など、いろいろな緑が作れます。
自然の木々を見ても、同じ緑一色ではありません。様々な緑があります。
それを表現するには混色するのが一番です。
……と長くなりましたが、混色をお勧めする最大の理由は、【混色で描くとそれだけでうまく見える】からです。
原色と混色の比較:
試しに絵の具そのままの色と、混色で作った色を並べてみます。
此処では緑系の色を例にしてみました。
まず絵の具そのままの色です。
左がビリジヤン、右がフーカスグリーンです。
次は混色で作った色です。
ウルトラマリンライトとイエローオーカーの混色がベースです。
確かに鮮やかさや透明感は原色の方がはっきりしていますね。
しかし、風景画の中で山や原野、木立ちや庭が全て原色でしょうか?
実際には微妙な色の変化があると思います。
それらを表すにはやはり混色を行うのが望ましいと思います。
もちろん、日の当たって明るい所や清々しい空気の中でのはっきりした色など、
原色の力を借りるのも悪いことではありません。
さらに原色の緑を使って混色の緑を作るのもアリです。
様々な混色の緑の例:
もしこの絵が原色の緑と黄緑だけで描かれていたらと想像してみてください。 恐らく相当けばけばしい色の絵になると思います。
混色の基本:
絵の具の混ぜ方については別のページで書きましたので、ここでは基本色について少し触れます。
混色の基本は赤・青・黄の3色(3原色)で、ほぼ全ての色が作れます。
緑や茶、グレー等も、出来合いの絵の具ではなく3原色を混ぜて作ってみてください。
色味を調整するために3原色に緑や茶色の原色を足すのはOKです。
この3原色ですが、赤・青・黄系統であれば別の色でも構いません。
ここで個人の趣味が出てきます。
使用する3原色が普通に赤・青・黄の人もいますし、紅・紺・レモンイエロー、あるいは黄土色の人もいます。
私は紅・紺・黄土色(実際にはクリムソンレーキ・ウルトラマリンライト・イエローオーカー)を使っていますが、これは深みのある色合いなので、鮮やかな色合い用の赤・青・黄も用意しています。
美大の受験生などではオレンジ・緑・レモンイエロー、他にも朱色・藍色・黄色などの強烈な色合いを使う方も見かけますから、
この時点で個人個人の好みや特徴が出てくるようです。
慣れないうちは普通に赤・青・黄がやはり使いやすいのでここから始めていくと良いと思います。
作例:
少々極端ですが、本当に3原色だけで描いた絵(古い空家)です。
クリムソンレーキ(紅)・ウルトラマリンライト(紺)・イエローオーカー(黄土色)の3原色混色です。
(例外的に鮮やかさを出すために赤い花は通常の赤とクリムソン、黄色い花はクリムソンと黄色を混ぜました)
黒やグレー、茶、緑といった絵具は使っていません。
上の絵だと渋いので、渋い3原色+通常の3原色で描いた絵も載せてみます。
最初の絵と同じクリムソンレーキ(紅)・ウルトラマリンライト(紺)・イエローオーカー(黄土色)の3原色と、
通常の赤・青・黄色を使いました。
基本は渋い3原色を使い、明るさや鮮やかさが必要な場所に通常の3原色を使っています。
色の明るさ薄さは水の量で調整するので、渋い色や濃い色の3原色でもある程度明るい柄は描けます。