〜Le Monde〜 水彩風景画の簡単な描き方
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ハイデルベルグ城

〜風景画 レンガの建物〜


今回は上の絵を描く過程を紹介します。
あまり難しいことはせず、簡単に描けますので参考にしてください(制作時間約1.5時間)。


使用画材:


絵の具:
ヌーベルプチカラー
ホルべイン
ウィンザー&ニュートン


紙:
汎用画用紙(図形印刷)


筆:
ミニリセーブル4号(ホルべイン)



制作の基本:


※元の写真はブレがひどいため、載せても作例に向きません。 ですので写真なしで解説します。


1.面の向きを観察する。
壁面がどちらを向いているかを確認します。
ここではレンガ一つ一つではなく、壁面を一枚の面として考えると分かりやすいと思います。
なお、紙面に対しての垂直・水平・奥行】と 【描く対象の面の垂直・水平・奥行】 はであることをまず頭に入れておいてください。


この部分は手前に見えている橋と右の壁面です。
構図の例1:正面
構図の例1:壁面の構成
まず面の数・繋がりをみます(黒枠を参考)。
正面の橋の面が右の壁面とぶつかり、 右の壁面は橋と連結している面と更にもう一段右の壁面と段構成になっています。
面の向きは白い矢印を参考に見てみます。
正面の橋の壁面は画面に対してこちら(正面)を向き、右側の壁面は左向きと正面向き、さらに左向きの段構成です。
(実際には奥行き感があるので左向きの面は正面から見ると真横ではなく斜めに見えます)


2.レンガの向きを観察する。
まず手前に見えている橋の部分から解説します。
横長の長方形のレンガ(実際はレンガではなく赤い石材ですが)を水平に積み、 アーチ部分だけ輪郭を強化して積んであります。
この絵では一つ一つのレンガは描いていませんが所々に形が見えます。
焼きレンガは全部同じ色と形ですが、古い建物で石材を積んで作ってある場合、 一つ一つの大きさと形が違うことも多々あります。
そんなときは大きさも形もランダムに描きます。


3.レンガを配置する
面の構成を理解したら、『面の水平』方向に沿ってレンガを配置します。
上の2の画像左の水平(画面に対して)部分と、画像右の奥行き(画面に対して)方向部分のレンガの向きの違いがわかるでしょうか?
右にある壁面はレンガが奥行きに沿って描かれているので斜めになっています。


鉛筆での下描きはもちろんですが、色を置く際もレンガの向きに倣います。
水平に詰まれたレンガは筆も水平に、奥行き方向は奥行き方向に筆を動かします。
構図の例1:壁面の構成
構図の例1:壁面の向きとレンガの向き


レンガの描き方色々:


A.あえて変化をつけて描く。
細密画ならともかく、ざっとしたスケッチではレンガを一つ一つ丁寧に描かなくてもよいでしょう。
きっちり一つ一つ描いて塗るとレンガというよりタイル張りのようになってしまいます。


構図の例1:正面
この部分は絵の画面の正面に来るので目を引きます。
ここで見る人の目を惹き付けたい所ですね。
現物は一色の石材を切り出した石積みですので、もっと平面的で色の変化もありませんが、 ここでは変化をつけています。


まず鉛筆の下描き部分から。
見ての通り、レンガ一つ一つ壁面全部に書き込んではいません。
水平方向にラフにレンガの四角を幾つか描き、あとはアーチに沿って向きの違うレンガを適当に描いただけです。


次に色付けですが、赤茶色の混色を水平方向にチョンチョンと置いていきます。
余談ですが、左に見えているコンパクト絵の具セットがヌーベルプチカラーです。
(少々カスタマイズして別の絵の具を足していますが)
現在は改良されてターレンスプチカラーになっています。
構図の例1:描き始め
丸筆で描いていますが、平筆をお持ちであれば楽に四角の筆跡ができます。
きっちり四角に並べるのではなく、ここでも隣のレンガと触れたり重なったりして絵の具が混ざっています。
構図の例1:紙の上で色が混ざる
アーチの縁取りはレンガの向きが違うので、レンガの向きに筆をチョンチョン動かします。
構図の例1:アーチの向きにレンガを描き込む


赤茶色い石材一色でできていますが、赤茶色で塗り潰すと面白みがないので、 同色の濃淡のほか、上からブルーグレーや苔っぽいグリーンなどを重ねておいています。 構図の例1:色に変化をつける


混色例:
赤茶色……クリムソンレーキ・イエローオーカー・バーントシェンナ


B.レンガの形を変える。
きっちり切り出した石材や人工の石はきれいな長方形ですが、年月の経った石材は角が取れていたり、 自然の石を積み上げたりした場合は、レンガの形も不揃いです。


赤茶色い石材一色でできていますが、赤茶色で塗り潰すと面白みがないので、 同色の濃淡のほか、上からブルーグレーや苔っぽいグリーンなどを重ねておいています。


この部分は絵の下のほうで陰になっているので見えにくいかもしれませんが、一応変化を付けています。
レンガ一つ一つの形が左半分と右半分で違うのですが、見えるでしょうか?

構図の例2:レンガの描き分け
構図の例2:レンガの描き分け


左半分は比較的新しいのか、四角い形がわかる石材が積んであります。
右の石壁の石材は、相当古いようで形が判別し難いです。
ですので下描きも左は四角を意識し、右はごちゃっと鉛筆を走らせました。


暗いのでわかりにくいとは思いますが、左はレンガの向きに筆を走らせています。
右は既に形が判別できないので、点を打つように色をおき、暗い影に当たるので上から影の色を置いて、 形がわからない様子を出しています。


ここは影に当たるのでもとのレンガの色も濁った褐色を置き、上から濃いブルーグレーをかけています。
形も色も判別できない様子が出ていればよいのですが。


混色例:
褐色……イエローオーカー・クリムソンレーキ・ウルトラマリンライト・イエローグリーン
影………ウルトラマリンライト・イエローオーカー・クリムソンレーキ


C.シンプルに済ませる。
きれいに積まれた石壁は平面的です。
また、遠くになるとレンガ一つ一つはさほど目立ちません。
あまりレンガというものは意識せず、あくまで壁のつもりで描き始めます。
構図の例2:レンガの描き分け
これは絵の左の城門と塔の一部です。


鉛筆線はレンガ積みの水平方向に(ここでは奥行きになります)ざっと線を走らせ、 その間に垂直方向(高さ)にチョンチョンと短い線を点を打つように軽く書きます。
色も一つ一つのレンガは意識せず、あくまで壁の向きの方向に一まとめに色を置き、 数箇所にのみレンガを思わせる形に軽く筆跡を残します。
構図の例2:レンガの描き分け


D.この際、形は無視する。
遠くになってしまえばレンガ一つ一つの形は目に見えません。
一応レンガでできていることはわかりますが。
こんなときはレンガを思わせる色を置くだけにします。
構図の例2:レンガの描き分け


また、塀や城壁はともかく家の壁のレンガを丁寧に描いてしまうと、画面がうるさくなりますし、 場合によっては窓などのパーツがレンガの書き込みに負けてしまいます。
そのような時はレンガの形は描かなくて良いでしょう。
構図の例2:レンガの描き分け


混色例:
褐色……クリムソンレーキ・イエローオーカー・バーントシェンナ
※紙の上でグラデーションになるようににじみを利用して塗っています


仕上げ
全体のレンガを置いたら、今度はレンガ一枚一枚ではなく壁面を一枚と捉えて、 通常の壁面と同じく影などの処理をします。
色味の変化を付けるために薄く溶いた別の色を大き目の筆でざっと重ねても面白いです。


※応用:
レンガと書きましたがこの絵の実物は赤茶色い石積みです。
色を変えればヨーロッパなどの石造りの建物に使えます。


また、考え方としては、石畳や瓦屋根、ブロック塀なども同じです。


上手そうに見せるには:


【色をどうするか】


レンガというと赤茶色い焼きレンガを思い浮かべると思います。
もちろん他の色のレンガや石材もありますが、特に壁面に模様などがある場合を除き、 大体どの建物も全体が同じ色のレンガで作られています。
こんなとき、全体を同じ色で描いてしまうと非常につまらなくなってしまいます。
通常の平らな一枚壁以上に、色味の変化を極端に付けた方が面白い絵になります。


参考までに、今回の絵の場所は赤茶色い石材一色でできています。
もちろんベースは赤茶色を選択しましたが、ここへ黄色系、ブルー系、グリーン系を薄く溶き、 レンガを描いた上から色をまだらに置いて色味に変化を持たせています。
また、平らに塗るよりもムラがあるように塗った方が表面のごつごつした感じが出ます。


【ウェット・オン・ドライ(重ね塗り)】


一度色を付け、乾いたらその上に更に色をつける方法です。
パソコンで絵を描く人ならば、乗算レイヤーのようなものと思うと近いかもしれません。
色を濃くすることができ、色の境界もハッキリします。
色が重ならなかった部分は下の色がそのまま見え、重なった部分は下の色を上の色を混色したような色になります。
今回、レンガの赤茶色が乾いてから、ブルーグレーで影を重ね塗りしています。
ちなみにレンガ同士はウェットオンウェット(乾かないうちに次の色を置く方法)で塗っています。


ひとことメッセージ



  
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